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電子帳簿等保存制度の見直し ~令和5(2023)年度税制改正~【300号】

電子帳簿等保存制度とは、電子帳簿保存法に基づき、税法上保存等が必要な「国税関係帳簿」㊟や「国税関係書類」㊟を紙でなく電子データで保存することに関する制度で、以下の3つの制度に区分されています。

(出典:国税庁)

㊟「国税関係帳簿」とは、仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳、固定資産台帳などのことをいい、「国税関係書類」とは、決算関係書類(決算書、棚卸表など)及び取引関係書類(契約書、請求書、領収書など)のことをいいます。

Ⅰ 電子帳簿等保存(任意)

パソコン等を使用して会計ソフト等で作成した国税関係帳簿・書類は、プリントアウトせず電子データのまま保存することができます。

また、所得税法、法人税法又は消費税法に基づき保存義務が課される帳簿を「優良な電子帳簿」の要件㊟を満たして電子データで保存している場合には、過少申告加算税を5%軽減する措置が設けられています。ただし、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している必要があります。

㊟ 「優良な電子帳簿」の要件は、以下の3要件となります。

  • 訂正削除履歴の保存
  • 帳簿間の相互関連性
  • 日付・金額・相手方による検索機能

【改正点】

※ 令和6(2024)年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

「優良な電子帳簿」の対象範囲について、限定、明確化されました。

所得税、法人税について以下のとおり見直されました。なお、消費税については対象範囲に変更はありません。

(出典:国税庁)

Ⅱ スキャナ保存(任意)

決算関係書類(決算書、棚卸表など)を除く国税関係書類(取引先から受領した紙の契約書、請求書、領収書など)は、紙のままでなくスマホやスキャナで読み取った電子データを保存することができます。

【改正点】

※ 令和6(2024)年1月1日以後にスキャナ保存が行われる国税関係書類について適用されます。

  1. 入力者等情報の確認要件が不要とされました。
  2. 解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要とされました。なお、解像度(200dpi以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありません。
  3. 帳簿との相互関係性の確保が必要な書類が重要書類㊟に限定され、一般書類㊟については不要とされました。

㊟ 重要書類とは、契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類のことをいい、一般書類とは、見積書・注文書等や納品書の写しのように、資金や物の流れに直結・連動しない書類のことをいいます。

(出典:財務省)

Ⅲ 電子取引データ保存(強制)

所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務者(法人・個人事業者)は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやり取りした場合には、その電子データ(電子取引データ)を保存しなければなりません。

【改正点】

※ 令和6(2024)年1月1日以後にやり取りする電子取引データについて適用されます。

  1. 税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにしている場合に、検索機能の全てを不要とする措置の対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。
  2. 令和4(2022)年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5(2023)年12月31日)をもって廃止されます。なお、令和5(2023)年12月31日までにやり取りした電子取引データについて「宥恕措置」適用している場合、保存すべき電子取引データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば問題ありません(事前申請等は不要)。
  3. 新たな猶予措置が整備され、以下の2つの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。
  • 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
  • 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

(礒部)

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