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2024年度 診療報酬改定【316号】

医療サービスの公定価格である診療報酬は2年に1度見直されます。昨年末の予算編成の過程で医療機関の賃上げの原資となる本体部分が0.88%のプラスと決まっていましたが、このたび中央社会保険医療協議会(厚生労働省の諮問機関)が、サービスごとの改定内容を武見敬三厚労相に答申しました。

改定率の内訳を確認します。2016年度以降「薬価(薬の公定価格)」の引き下げを原資に「本体(技術料、人件費)」を引き上げて、全体の改定率をマイナスにする傾向が続いており、前回2022年度の改定では「本体」を0.43%引き上げた一方「薬価」を1.37%引き下げて、全体では0.94%のマイナスでした。今回は本体が+0.88%(2022年度+0.43%)、薬価は▲0.97%(2022年度▲1.35%)、医療材料価格は▲0.02%(2022年度▲0.02%)、全体で ▲0.12%(2022年度▲0.94%)となり、今回も全体では引き下げとなりました。本体の+0.88%の内訳は「看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、R6年度にベア+2.5%、R7年度にベア+2.0%を実施していくための特例的な対応」について+0.61%、「入院時の食費基準額の引上げ(1食当たり30円)の対応」に+0.06%、「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化」は▲0.25%、残りの+0.46%が各科に配分(医科+0.52%、歯科+0.57%、調剤+0.16%)、となっています。

中央社会保険医療協議会は今回の改定に当たっての基本認識を以下のように掲げました。

  • 「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応」
  • 「全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応」
  • 「医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現」
  • 「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」

さらに基本的視点と具体的方向性を下記の通り示しています。

①現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】

【具体的方向性の例】

  • 医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組
  • 各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進
  • 業務の効率化に資する ICT の利活用の推進、その他長時間労働などの厳しい勤務環境の改善に向けての取組の評価
  • 地域医療の確保及び機能分化を図る観点から、労働時間短縮の実効性担保に向けた見直しを含め、必要な救急医療体制等の確保
  • 多様な働き方を踏まえた評価の拡充
  • 医療人材及び医療資源の偏在への対応

②ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進

【具体的方向性の例】

  • 医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
  • 生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取組
  • リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進
  • 患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価
  • 外来医療の機能分化・強化等
  • 新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組
  • かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
  • 質の高い在宅医療・訪問看護の確保

③安心・安全で質の高い医療の推進

【具体的方向性の例】

  • 食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応
  • 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価
  • アウトカムにも着目した評価の推進
  • 重点的な対応が求められる分野への適切な評価(小児医療、周産期医療、救急医療等)
  • 生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取組推進
  • 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進
  • 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病院薬剤師業務の評価
  • 薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進
  • 医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等

④効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

【具体的方向性の例】

  • 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等
  • 費用対効果評価制度の活用
  • 市場実勢価格を踏まえた適正な評価
  • 医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進(再掲)
  • 患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価(再掲)
  • 外来医療の機能分化・強化等(再掲)
  • 生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取組推進(再掲)
  • 医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
  • 薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進(再掲)

今回の見直しで柱の一つとなったのは医療機関で働く人の処遇改善ですが、物価高騰や高まる賃上げの機運を背景に医療界は大幅な賃上げの原資を求めました。多くの医療機関は初診料を90円上げて2,970円に、再診料は40円上げて770円とします(3割負担の場合は窓口での支払いが初診で27円、再診は12円上がります)。入院基本料については病棟の種類によりますが、一日当たり最大で1,040円(3割負担で312円)上がります。こうした引き上げなどで、看護師や看護補助者、技師などに対し、来年度は2.5%、再来年度は2%のベースアップを行うほか、40歳未満の勤務医や事務職員などの賃上げも行うとしています。

また、2024年度は3年に1度の介護報酬の改定もあり、6年に1度となる医療と介護の同時改定を機に連携を推し進めたい考えです。介護施設と連携し入所者の病状悪化時に往診したり、入院を受け入れたりする医療機関への報酬が厚くなります。近年増えている高齢者の救急搬送の受け皿として、リハビリや栄養管理を手厚くして早期の帰宅を支援できる病棟が新設されます。マイナ保険証や電子処方箋などの推進に取り組む医療機関に対しての医療DX推進体制整備加算(初診時に医科80円、歯科60円、調剤40円を上乗せ。3割負担の場合、医科24円、歯科18円、調剤12円上がります)も新設されます。

一方、医療費の抑制に向けて、生活習慣病に関する報酬を再編し月に1回しか請求できないようにするほか、処方箋料の引き下げ、症状が安定している場合に一定期間受診しなくても繰り返し使える「リフィル処方箋(前回改定で導入されたが活用が進んでいない)」の発行を促す加算の拡充なども盛り込まれました。

高齢化率の上昇と高齢者人口の増加がつづく社会において、限られた予算と限られた人材による、よりスマートな医療体制の構築が求められる中、診療報酬体系の見直しはさらに重要性が高まっています。

(樋口)

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