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退職金いわゆる5年ルール 一部10年に②【357号】

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税理士法人 中央総研

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11月も中盤に差し掛かり、10月の残暑とは打って変わって、急な冷え込みのため体調を崩す方が周りで見受けられますが、いかがお過ごしでしょうか。世間では、新政権による今後の税制について検討が進められ、少しずつ方向性が見え始めてきていますが、ガソリン税の年内での廃止を除いては、まだ不確定な状況です。今回は前月ご説明をした退職金の退職所得控除、いわゆる5年ルールが10年ルールに一部改正される件の続きをご紹介させて頂きます。

Ⅰ.一部10年ルールへの変更 源泉徴収票の提出範囲拡大

10年ルール

確定拠出年金に係る老齢一時金(DC一時金)の支払いを受けた場合の退職所得控除の調整規定(5年ルール)について改正が行われることになりました。改正が適用されると、企業に在籍しながら、仮に60歳の時にDC一時金を受け取り、5年後の65歳の企業退職時に退職一時金を受けとった場合に、10年ルール(詳細は355号の「退職金いわゆる5年ルール 一部10年に①」をご一読ください。)が適用され、企業の退職一時金の支払い時に重複する勤続期間を差し引いて(調整して)退職金の退職所得控除の金額を計算することになります。(令和8年1月1日以降に支払われるDC一時金が対象。)この改正により、退職所得の源泉徴収票の記載内容と提出範囲の拡大が行われることになりました。今回はこの説明です。

提出範囲の拡大

改正前は、退職所得の源泉徴収票の税務署への提出の対象者は、役員のみが対象でしたが、令和8年以降は退職手当等を受給したすべての居住者に拡大をされ、役員だけでなく従業員分についても作成提出が必要となりました。

(令和8年1月以降支払う退職金から適用)

様式(記載内容)の変更

様式についても一部変更が設けられています。退職所得の源泉徴収票中の支払金額の前に番号欄が新設されました。受給する退職手当の種類に応じて1~7の番号を記入する仕組みで、これにより、5年ルールや10年ルールの計算対象となるものか判断を可能とするためです。

具体的な番号と内容は、下記の通りです。

  1. 確定給付企業年金(DB)の一時金など
  2. 確定拠出年金(企業型DC・iDeCO)の老齢給付一時金
  3. 特定譲渡制限付き株式等の経済的利益
  4. ストックオプションの権利行使益
  5. 一般的退職手当等+上記3.の経済的利益
  6. 一般的退職手当等+上記4.経済的利益
  7. 一般的退職手当等+上記3.と4.の両方の経済的利益

注)5.~7.に該当する場合は、その番号に加えて、摘要欄に経済的利益の金額を記入することとされています。

提出期限

退職所得の源泉徴収票は、原則として退職後1ヶ月以内に交付をし、税務署・市町村等に提出をすることになっていますが、例外的に翌年1月末までに前年支給分をまとめて税務署に提出をすることができるという取り扱いが認められています。この取り扱いについては、改正後もそのまま存続となるため、実務上の観点からすると税務署には令和9年1月末提出分からの開始となります。

いかがでしたでしょうか。
現在のところ、税制改正議論の内容を見ていると、退職所得の計算の改正は、今回見送られることになると報道されていました。年々退職所得にかかる税金計算について課税の公平の観点から改正が加えられていく状況を考えると、遠からず、退職所得控除20年超の70万円控除廃止で40万円控除への統一か、はたまた、退職所得を計算する際の1/2課税とする現在の計算方法の廃止かと考えてしまいます。例年の恒例行事ではあるのですが、寒さが増してくる時期に懐も寒くなる議論や情報は、どんなものかと感じてしまう今日この頃です。

(川合)

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