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空き家の譲渡所得の3000万円特別控除【299号】

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除とは、空き家になった建物と敷地を相続し、その相続した空き家と敷地を売却したときの譲渡所得(売却益)から3,000万円を控除することができる制度です。不動産を売却した際に譲渡所得が発生すると、譲渡所得税や住民税が課税されます。
その譲渡所得税や住民税の課税を抑える制度を創設することで、全国の空き家を減らすことを目的としています。

前提として、昭和56年5月31日以前の建築物となっています。
そのため、昭和56年6月1日以降に建築された建物の場合は、その他の適用要件を満たしても適用できません。空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用要件は数が多く、なかなか理解しづらい面があります。
空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、幾つかの条件をクリアする必要があるため、一つ一つ条件を確認してみましょう。

空き家の3,000万円特別控除の適用期間

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用期間は平成28年4月1日~令和5年12月31日までです。
この間に相続か遺贈で取得した被相続人が住んでいた住宅、または被相続人が住んでいた住宅の敷地などを売却する必要があります。なお、被相続人とは死亡した人で相続される人のことをいいます。また、相続の開始から3年目の12月31日までに相続した家屋を売却することも条件になります。

相続した空き家は区分所有建物か

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用を受けることができるのは、空き家である区分所有建物以外のみです。
そのため、相続を受けた家屋が区分所有建物の場合は3,000万円特別控除を適用することができません。
区分所有建物とは、構造上区分されており、独立して住居や店舗・事務所・倉庫などの用途に供することができる数個の部分から構成されている建物のことです。マンションでも区分所有建物ではないこともありますし、一戸建て(二世帯住宅など)でも区分所有建物の場合もあります。そのため、マンションか一戸建てで判断するのではなく、全部事項証明書(登記簿謄本)を見て区分所有建物であるか確認することとなります。

相続で取得した空き家は昭和56年5月31日以前の築年数か

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、相続した空き家が昭和56年5月31日以前の築年数の建物にしか適用されません。昭和56年5月31日以前の築年数であればいくら古くても利用することが可能ですが、昭和56年6月1日以降に建築された新しい建物の場合は利用ができません。

築年数は法務局で発行の全部事項証明書に記載されています。

相続で取得した空き家に誰が住んでいたか

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、相続される家屋に被相続人1人で住んでいることが条件(同居NG)になります。
そのため、相続される家屋に、他に居住している人がいた場合には、3,000万円特別控除は適用されません。

相続した空き家を相続から売却前に貸していたか

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は相続開始後、売却前までに空き家を貸していた、あるいは誰かが居住、または事業のために利用していた場合は適用されません

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を過去に受けたことがあるか

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は、同一の被相続人から相続した家屋については1度しか利用することができません

要件を満たせば、父からの相続で空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を利用し、母からの相続で空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を利用することは可能です。

しかし、父からの相続で2つ空き家を相続しても1度しか利用するごとができません。

相続した空き家の売却先は第三者か

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は、特定の関係性(一定の親族、同族会社など)がある買主に売却すると適用できません

相続した空き家の売却金額は1億円以下か

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、相続した空き家を1億円以下で売却する必要があります。

相続した空き家をどのような状態で売却するのか

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、

空き家のまま売却しても
〇空き家を解体して売却しても     適用されます。

空き家のままと空き家を解体した場合の要件は異なるため、それぞれ説明をしていきます。

空き家のまま売却する場合

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、売却時に耐震性が証明できる住宅であることが必要です。耐震性が証明できない場合は、耐震性を高めるリフォームや改築工事をおこない、耐震証明を取得することとなります。耐震証明を取得するには多額の費用がかかる事が多いため、耐震性を高める工事をするときには注意が必要です。前述の要件を全て満たした上で、耐震証明が取得できる場合は、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除が適用されます。

空き家を解体し敷地のみ売却する場合

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するには、空き家を相続し解体してから売却するまでに、同一敷地に建物を建築することはできません。相続した空き家を解体した後、売却が済むまで更地のままになっていることが条件です。相続した空き家を解体した後、同一敷地が売却まで更地状態である場合は、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除が適用されます。空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するときには、手続きや申請書類が必要となります。

ここからは、3,000万円特別控除を適用するために必要な手続きや書類を紹介していきます。

申請の流れ

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用するときの流れは次のとおりです。

  1. 空き家を管轄している市区町村へ被相続人居住用家屋等確認書の交付を申請
  2. 被相続人居住用家屋等確認書を市区町村より受領
  3. 被相続人居住用家屋等確認書など申請に必要な書類を添付し確定申告をする

申請に必要な書類

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の申請に必要な書類は次のとおりです。

  • 売却する空き家の全部事項証明書(登記簿謄本)
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 不動産売買契約書の写し

被相続人居住用家屋等確認書の発行を受けるには、次の書類が必要です。

  • 被相続人の住民票除票の写し
  • 被相続人が居住していた家屋の解体時もしくは売却時の相続人全員分の住民票の写し
  • 不動産売買契約書の写し
  • 空き家を解体した後の被相続人が居住していた住宅の閉鎖事項証明書の写し
  • 相続から売却まで空き家だったことがわかる書類
  • 空き家解体から売却まで敷地の使用状況がわかる写真

 

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は、相続を受けた空き家を売却したときに譲渡所得が出た場合、この譲渡所得から3,000万円を控除できる減税制度です。3,000万円の特別控除の適用を受けるためには、様々な条件をクリアする必要があります。
適用条件はかなり細かく規定されているため、上記を参考にして確認ください。
また、3,000万円特別控除の要件を満たしていた場合は、申請手続きをしなければなりません。売却した空き家を管轄する市区町村へ行き、被相続人居住用家屋等確認書の交付を受け、そして、交付を受けた書面を添付し、確定申告で3,000万円特別控除を申請します。3,000万円特別控除は適用条件が複雑なため、事前に適用できるかをあらかじめ確認しておくことが重要です。

新堀

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