ニュース

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例【301号】

1.「相続税の取得費加算の特例」の概要

相続税の取得費加算の特例とは、相続人等が、被相続人から相続により取得した土地、建物、株式を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合の譲渡益に対して課税される譲渡所得税の計算の際に、納付済みの相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算することがでるという制度です。

2.「相続税の取得費加算の特例」を受けるための要件

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
    ➡相続や遺贈により相続財産を取得した人がその相続財産を自分で売却している。
  2. その相続財産を取得した人に相続税が課税されていること。
    ➡配偶者の税額軽減や各種特例等を受けて相続税の納税をしていない人は対象外となります。
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
    ➡被相続人が亡くなった日から3年10ヶ月以内に売却している。

3.「相続税の取得費加算の特例」の計算方法・計算式

取得費に加算する相続税額は、次の算式で計算した金額となります。

ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益(土地、建物、株式などを売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。)の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となります。なお、譲渡した財産ごとに計算します。

参照:国税庁HP

4.「相続税の取得費加算の特例」を受けるための手続き

この特例を受けるためには次の書類を添付して、売却した年の翌年2月16日~3月15日までに確定申告をすることが必要です。

  • 相続税申告書の写し
  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

5. 他の特例との併用の可否

  1. 概算取得費・・・併用可
    譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。しかし、売った土地建物の取得費が分からない場合には、取得費の額を売った金額の5%相当額とすることができます。
  2. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除・・・併用可
    居住用財産、いわゆるマイホームを売却した時は、所有期間の長短に関係なく譲渡所得金額から3,000万円まで控除ができる特例のことです。
  3. 特定の居住用財産の買換えの特例・・・併用可
    居住用財産、いわゆるマイホームを売却して、新たに居住用財産を買い換えた時は、一定の要件のもと譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
  4. 空き家に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除・・・併用否
    相続又は遺贈によって空き家及びその敷地を取得した相続人等が、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その不動産等を売却した時は、一定の要件のもと譲渡所得金額から3,000万円まで控除ができる特例のことです。

(中嶋)

新着情報

税理士法人中央総研 知識と経験を活かし、お客さまに寄り添う
NEW
2023年07月28日 立替払いインボイス【302号】
一覧に戻る
OLD
2023年06月20日 電子帳簿等保存制度の見直し ~令和5(2023)年度税制改正~【300号】

別の記事も読む

行事