2026年(令和8年)の税制改正(令和8年度税制改正大綱)における相続税および関連する贈与税の改正は、特に不動産オーナーや富裕層、経営者にとって大きな転換点となる内容が盛り込まれています。最大の特徴は、従来の「節税スキーム」を潰す方針がさらに強まり、実質的な課税強化が行われる点です。
以下に、2026年税制改正における相続税のポイントを確認します。
2026年税制改正における相続税・資産税の背景
政府は高齢化に伴い、高齢者から若年層へ早期に資産を移転させることを目的としつつも、過度な節税対策には税制面で制約を設ける方針です。2024年に始まった生前贈与のルール改正(持ち戻し期間の7年化)に続き、2026年は不動産の評価方法など「財産評価の適正化」に焦点が当てられています。
不動産(賃貸不動産)の相続税評価見直し(重要)
注目すべき点は、賃貸用不動産(マンション等)の相続税評価ルールです。
- 改正の方向性
「相続開始5年以内に取得した賃貸用不動産」について、原則として「時価」に近い価格で評価する仕組みが導入されます。 - 実質的な課税強化
これまでは、相続税評価額(路線価)が市場実勢価格(時価)より大幅に低いことを利用して、銀行から借入をしてマンション等を購入し、財産と圧縮して相続税を軽減する手法が主流でした。今回の改正で、この差額(ギャップ)を利用した節税効果が相当に薄れることになります。 - 対象と影響
特にタワーマンションや、新たに土地を取得して賃貸経営を始める予定のオーナーは、実質的な相続税負担が増える可能性があります。
非上場株式の評価方法の見直し(事業承継)
会社経営者にとって重要な、非上場株式の純資産価額方式による評価が変更される可能性があります。
- 改正点(予想)
非上場株式を純資産価額方式で評価する場合に、現行では取得後、課税時期前3年超で土地は路線価で、家屋等は固定資産税評価額を基準として評価をしていますが、時価引き直し要件となる期間が、現行の「課税時期前3年以内」から「5年以内」に延長される可能性があります。 - 影響
これにより、資材が高騰している今般、設備投資をして事業基盤を盤石に進める際に高額な不動産が含まれている場合、株式評価額が上昇し、事業承継時の税負担が増加する恐れがあります。
生前贈与の持ち戻しルール(7年加算)の定着と注意点
2024年1月からの改正により、暦年贈与の「持ち戻し期間」が3年から7年へ段階的に延長されています。2026年時点では、この新ルールがより定着しています。
- 7年持戻し
相続開始前7年以内に贈与された財産は、相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません(納税された贈与税は控除されます)。 - 2026年の実務
「いつ贈与したか」だけでなく「いつ相続が開始したか」によって加算の年数が異なるため、過去の贈与履歴の管理が必須となります。 - 贈与税の基礎控除
相続時精算課税制度には110万円の基礎控除が新設されており、この制度を活用した早期の資産移転を進める動きは続きます。
その他の改正点・緩和措置
課税強化の一方で、事業承継や特定の目的を持った贈与については、以下のような緩和措置や延長が示されています。
- 事業承継税制(特例)の継続
非上場株式の納税猶予特例などは、引き続き事業承継を支援する枠組みとして維持・活用が推奨されています。 - 結婚・子育て資金の贈与非課税制度
適用期限が2年延長される予定です。 - 不動産の登記義務化
相続等で不動産を取得した際、住所や氏名の変更登記が2年以内に義務化され、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料が適用されます。
まとめ:2026年以降の相続対策
2026年の税制改正によって、特に「不動産を活用した過度な節税」は非常に難しくなります。今後の相続対策では、以下の点が重要です。
- 純粋な収益性・資産価値の重視
節税メリット目的の不動産投資ではなく、収益性(キャッシュフロー)が高い不動産への投資へシフトする。 - 早期かつ計画的な贈与
持ち戻し期間が7年となったため、計画的に早期から暦年贈与を行う、または相続時精算課税制度を活用する。 - 専門家への相談
不動産評価が時価ベースに近づくため、個別の不動産ごとの正しい税負担の見積もりが不可欠です。
※上記により、不動産価格の高騰局面では「いつブレーキがかかるか」という出口戦略(売却時期の想定)を含めた適正な投資判断が非常に重要になります。含み益が損失に転じるリスクを抑え、健全な資産運用を行うため検討が必要です。
(新堀)