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退職金と税金【351号】

この記事の執筆者

税理士法人 中央総研

税理士・医業経営コンサルタント・社会保険労務士など専門性の高い資格を持ったスタッフを有し、1984年の開業以来、30年以上にわたり関与先企業の税務会計業務を支援。税務申告から事業承継などの資産税対策、事業再生・企業再編・M&A・株式公開などの指導・経営コンサルティングにいたるまで、関与先企業の多様なニーズに応えている。

退職金とは、労働者が退職に際して支払われる金銭です。日本では退職金、退職慰労金などと呼ばれているものです。法定化されている国、されていない国、されていなくても習慣的に支払われる国などがあり、金額条件等は様々です。

退職金は本質的には賃金の後払いであり、終身雇用制を基調とした日本においては永年勤続を奨励する意味もあり広く行き渡っている制度です。

しかしながら、法で定められている制度ではないため退職金制度を設けなくても違法ではありませんが、就業規則に退職金の規定を設けた場合は賃金の一部とみなされ、請求があった場合は支給しなければならない事になっています。
近年は退職金制度の廃止、選択制をとる企業もあります。

なお使用者による解雇(会社都合退職)の場合、使用者は30日前に予告するか、30日以上の解雇手当を支給する必要があります。

【労働基準法第20条】
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

労働条件通知書

【労働基準法第89条第3号の2】
就業規則に退職金についての規定を設ける場合は、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項を設けなければならない。

退職金を不支給または減額する事由を設ける場合は、「決定、計算の方法」に該当するため、就業規則に記載する必要があります。(昭和63年1月1日基発1号)

【労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条第1項第4号の2】
またこれらの規定は労働条件の明示事項ともされていて、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対してこれらの規定を明示する必要がある。

金額は、主に退職日における勤続年数と職能に応じて算定されますが、勤続年数が長いほど、そして職能が高いほど、勤続年数当たりの単価が高額になります。

なお、支給額は企業ごとに就業規則により決められているため、同じ勤続年数でも、企業や業種によって金額には開きがあります。

また、退職事由によっても支給される金額が異なることがあり、自己都合の場合は低く、会社都合・定年退職の場合は高いことが多く、懲戒解雇などの場合、支給されないもしくは減額されることがあり、企業が人員整理を目的に退職勧奨をする際に退職金を増額する例もあります。

以上のように日本の企業の場合、長期勤続をした労働者に対して支払われる給与は、通常は最も高額な給与になると思いますので、それを基準に退職金を計算すれば、最も高額な金額が算出されるので長年の功績を反映する事が可能です。

ただし、諸事情により最終的な給与を減額されていると勤務期間の本来の功績を反映できない可能性もあります。そのような場合は、過去の給与の平均を算出して退職金を計算する事も長年の会社への功績を計る一つの方法です。

税法による退職金の控除は次のようになっています。

退職所得控除額は、勤続年数によって以下のように計算されます。

  • 勤続年数20年以下の場合の控除額
    勤続年数 × 40万円(最低80万円)
  • 勤続年数20年超の場合の控除額
    800万円 + (勤続年数 – 20年)× 70万円

 国税局の計算で勤続40年の方の退職金の非課税額は下記の様になります。

【例】勤続40年の場合

  • 勤続年数:40年
  • 控除額:800万円 + (40年 –20年)× 70万円 = 2,200万円

これを40年で割ると1年55万円になります。  税法も目安として長期勤続勤務者に対しては年間55万円までの退職金には税金をかけない事になっています。

また、各勤続年数にて計算した退職金から、各勤続年数により計算した控除額を差し引いた金額にそのまま課税するのではなく、現在の税法上はこれに1/2を乗じた金額を課税所得にしております。

まとめ

現在の税法上は長期勤続に対して支給される退職金に対しての税金はある程度優遇されています。

(大橋)

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2025年07月29日 キャッシュレス納税【350号】

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