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退職金いわゆる5年ルール 一部10年に①【355号】

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税理士法人 中央総研

税理士・医業経営コンサルタント・社会保険労務士などの専門家が在籍。創業から30年以上の豊富な経験とノウハウを活かし、税務会計、事業承継、M&A、コンサルティングまで、お客様の多様なニーズにワンストップで対応している。

10月も中盤に差し掛かり、例年と比べまだ暑さが残っている今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。世間では、政権の枠組みが話題に上り、税制について来年以降の方向性がいまだ見えぬ状況でこの原稿を書いています。そのような状況ですので、今回は既に決まっている改正等の内容のご紹介とさせて頂きたいと思います。

今回は、退職金の退職所得控除のいわゆる5年ルールが10年ルールに一部改正される件についてです。

Ⅰ.退職金の税金計算 いわゆる5年ルールとは

退職金の税金算出方法

退職金から源泉徴収される所得税・住民税の計算は、退職金の金額から退職所得控除の金額を控除した金額に2分の1を乗じて算出した退職所得に対して税率を乗ずる形で算出されることになります。

退職所得控除金額

退職控除の金額は、勤続年数に応じて下記の計算式の合計で計算されます。

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数
  • 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

いわゆる5年ルール

上記の退職所得控除の金額は、所得に与える影響が大きいため課税の公平の観点からも、退職金が複数回支払われた場合であっても、その計算期間(勤務期間)が重複せずに使用すべきところです。

  従って、下記のようなルールが設けられています。

退職金が2回支払われる場合、1回目の退職金支払いが、2回目の前年以前4年以内(5年以内)に、退職金の支払いがある場合には、重複する勤続期間を差し引いて(調整して)2回目の退職所得控除の金額を計算することになります。

一方、1回目の退職金の支払いが2回目の前年以前4年以内でない(5年超の)場合に退職金の支払いがある場合には、2回目の退職金控除の金額については調整せず、2回目の退職金の勤務期間で退職所得控除の金額を計算することになります。

Ⅱ.改正 一部10年ルールへ

10年ルールの創設

確定拠出年金に係る老齢一時金(DC一時金)の支払いを受けた場合の退職所得控除の調整規定(いわゆる上記で述べている5年ルール)について改正が行われることになりました。企業に在籍しながら、60歳の時にDC一時金を受け取り、さらには5年後の65歳の実際の企業退職時に退職一時金を受け取り、5年ルールでも、二重に退職所得控除を受けるケースが見受けられるようになったためです。
このため、退職金の支払いから前年以前9年以内(10年以内)にDC一時金が支払われた場合には、退職金の支払い時に重複する勤続期間を差し引いて(調整して)退職金の退職所得控除の金額を計算することになります。(令和8年1月1日以降に支払いが行われるDC一時金が対象となります。)

注意点

前述と逆に退職金の支給を受け、その後DC一時金の支給を受けた場合については、すでに「前年以前19年以内」となっているルールが存在しますので変更とはなりません。つまりこの場合、DC一時金を後から受け取る場合には、DC一時金の退職所得控除が調整される形になっています。

最後に

今回の改正は、これはあくまでのDC一時金への部分的な対応となります。従前の5年ルールも残り、10年ルールと併存される形となり、退職金控除の計算が複雑となるため、計算をする担当者泣かせの改正となりそうです。
いかがでしたでしょうか。今回は5年ルールの一部改正についてご紹介しましたが、次回はこの改正に対応した退職所得の源泉徴収票の提出範囲拡大という内容についてご紹介をさせて頂く予定です。

(川合)

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2025年09月30日 配偶者及び扶養控除要件【354号】

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