金融機関は、被相続人が死亡したことを知ると、被相続人名義の預金口座を凍結し、お金を引き出せないようにします。
これは、死亡後の相続預金は相続人に帰属する「遺産」であり、相続人全員の同意がなければ払戻しをすることができないと法的に扱われているためです。
凍結された相続預金は、それぞれの金融機関所定の相続手続きに基づいて、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書などの必要書類を提出しなければ払戻しを受けることができません。
そこで、被相続人の預貯金のうち一定額については、他の相続人の同意がなくても、各金融機関から払戻しを受けることができるようになりました。
払戻しを受けられる金額
相続預金のうち、以下の計算式により算出された金額については、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関から単独で払戻しを受けることができます。ただし、同一金融機関からの払戻しは150万円が上限となります。
(計算式)
=相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
(具体例)
相続人は長男、次男の2名で相続開始時の預金額が1口座で普通預金が600万円の場合
- 長男が単独で払戻しができる額 =600万円×1/3×1/2=100万円
手続きに必要な書類
- 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書
遺産分割協議への影響
この制度を利用して相続預金の払戻しがされた場合には、払戻しを受けた相続人が遺産分割で取得した財産とみなされ、後の遺産分割の際に事後的に調整をすることが予定されています。
つまり、払戻しを受けた相続人は、払い戻された金額の分だけ、相続財産全体からもらえる額が減額されます。
(中嶋)