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伸び悩む日本のGDPと下押しリスク【267号】

3年ぶりのプラス成長

内閣府が3月9日に発表した2021年暦年の国内総生産(GDP)改定値によりますと、物価変動の影響を除いた実質経済成長率は1.6%増となり、3年ぶりにプラス成長となりました。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年の落ち込み4.5%減と比べますと、日本経済の回復は限定的でした。
特に世界と比較しますと、日本の回復力の弱さが目立ちます。IMFの「世界経済見通し(2022年1月)」によりますと、2021年のGDP成長率は、世界5.9%増(2020年3.1%減)、米国5.6%増(2020年3.4%減)、ユーロ圏5.2%増(2020年6.4%減)、英国7.2%増(2020年9.4%減)と高い伸び率となっており、米国のGDPは既にコロナ前の水準を超えています。日本の成長率1.6%増は、米欧に比べて低い成長率にとどまっており、回復力で世界に見劣りしています。

見劣りする日本の回復力

IMFは「世界経済見通し(2021年4月)」において、2021年の日本の成長率を3.3%増と予測していました。しかし、日本の緊急事態宣言が長引いたことで、2021年10月には、2021年の日本の成長率見通しを2.4%増に0.4ポイント引き下げていました。そして、2021年10月~12月期の下振れがさらに成長率を押し下げた結果、2021年の日本の成長率は1.6%増にとどまり、日本経済は予測通りの回復を実現できませんでした。
成長率が1.6%にとどまった要因をみますと、輸出が11.6%増(2020年11.8%減)まで回復したのに対し、個人消費が1.3%増(2020年5.2%減)、設備投資が0.3%減(2020年6.5%減)と、内需の低迷が鈍い回復の背景にありました。
日本は、米国や英国に比して感染者数を低く抑えていたものの、ワクチンの普及に時間がかかり、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の長期化により、消費が低迷したうえ、半導体不足による自動車の減産などの影響を受けました。そもそも、日本の回復力が弱い背景には、日本の潜在成長率の低さも影響していると考えられます。

2022年日本経済の下押しリスク

2021年の日本の実質GDP実額は536.8兆円でした。2022年の日本経済は、コロナ前の水準(2019年:553.1兆円)を意識することになると思います。日本の実質GDP(暦年)がコロナ前の水準を回復するためには、3.0%超のプラス成長が必要となります。
しかし、2022年の日本経済は、オミクロン型の流行が個人消費回復の重荷になっているうえ、部品不足による減産が成長率を下押ししています。さらに、資源価格高騰によるインフレの影響が懸念されています。
2022年2月の企業物価指数(速報)は、前年同月比で9.3%上昇し、オイルショックの影響があった1980年12月以来の伸び率となりました。企業は、これまでコストの削減を進めてきましたが、コストの上昇を販売価格に転嫁する動きも出てきています。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響

ロシアは原油と天然ガスの一大産出国であるため、ロシアのウクライナ侵攻に対する米欧による経済制裁は、原油や天然ガスの価格の高騰をもたらしています。昨年から資源価格が上昇していた状況下で、ロシアのウクライナ侵攻により原油などの資源価格が高騰し、小麦などの穀物価格も急騰しています。ロシアによるウクライナ侵攻の落としどころは見えておらず、事態は長期化する恐れがあります。
米欧などによる経済制裁が長期化し、外需が悪化しますと、日本の輸出が減少する可能性があります。さらに、資源高が長引くことで、日本の貿易赤字が拡大し、経常赤字が常態化する懸念も生まれています。
また、日本とロシアとの貿易額は、輸出入全体の1%程度と、輸出入ともに規模は大きくありませんが、日本は、LNGや石炭のほか非鉄金属をロシアから輸入しています。この非鉄金属にはパラジウムやニッケルなどのレアメタルが含まれていることも、不安材料の一つになっています。

まとめ

コロナ禍からの回復を目指していた2022年の日本経済には、感染の再拡大と資源価格の高騰というリスクに加え、経済制裁の影響という先を見通しにくい下押し要因が加わり、先行き不透明感が強まっています。

(小島淳次)

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