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[189号]改正所得拡大促進税制の適用が簡素化します。

改正前の所得拡大促進税制の給与支給要件は次の3つをクリアする必要があり、判定が煩雑でした。

 ①5年前の基準期間と適用年度の給与支給額の増加割合が一定の要件(中小企業者は3%、大企業は5%)を満たすこと。

 ②適用年度の給与等支給額が比較年度(適用年度の月数に換算した前事業年度をいいます。)の給与等支給額を超えること。

 ③継続雇用者に対する適用年度の平均給与等支給額が比較年度の平均給与等支給額を超えること(大企業は2%以上増加するこ

  と)。

改正所得拡大促進税制では給与支給要件を大幅に簡素化したうえで、新たに投資要件と教育訓練費要件が追加されています。

 ①継続雇用者の範囲と給与支給要件の改正点

   今回の改正では、平均給与等支給額の計算の対象となる継続雇用者について、前期に中途入社した者や当期に退職した者が

  除外され、当期と前期の全期間において給与等の支給がある者だけを対象とすることになりました。

   そのため、継続雇用者の給与等総額が増加していれば平均給与等も増加していることになり、継続雇用者の判定や、1人当

  たり平均給与等の算出をする必要がなくなります。

   その上で、中小企業者等の場合は継続雇用者の平均給与等が1.5%又は2.5%、大企業の場合は3%以上増加していれば給与

  支給要件を満たすことになります。

 ②投資要件

   投資要件は大企業のみに適用され、以下の基準を満たす必要があります。

    適用年度の国内設備投資額 ≧ 適用年度の減価償却費の総額の90%

 ③教育訓練費要件

   中小企業者は、「当期の教育訓練費」と「前期の教育訓練費」を比較して10%以上増加した場合、大企業は「当期の教育訓

  練費」と「前期と前々期の教育訓練費の平均」を比較して20%以上増加した場合に税額控除の上乗せが認められます。

   この上乗せ措置を適用するためには当期の教育訓練費のみならず、過去の教育訓練費を抽出する必要がありますが、その実

  績がない場合を除き、洗い出すことができないときには対象外であることに留意する必要があります。

 ④税額控除額

   今回の改正では、給与支給要件をベースに投資要件と教育訓練費の組み合わせによる税額控除の上乗せ措置が用意されてい

  ます。

   中小企業者では、給与支給要件である平均給与等の増加率が1.5%以上の場合は雇用者給与等支給額の増加額に対し15%の

  税額控除が認められ、平均給与等の増加率が2.5%以上でかつ教育訓練費要件などを満たす場合は雇用者給与等支給額の増加額

  に対し25%の税額控除が認められます。

   また、大企業では、平均給与等の増加率が3%以上でかつ投資要件を満たす場合は雇用者給与等支給額の増加額に対し15%

  の税額控除が認められ、さらに、教育訓練費要件を満たせば5%が上乗せされます。

   なお、いずれを適用しても控除額の上限は適用年度の法人税額の20%です。

今回の改正では給与要件や投資要件の判定が比較的容易であり、特に中小企業者で黒字企業にとっては適用範囲が広がることから、検討が必須の制度になっています。

(田中)

 

 

 

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