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[166号] 金利を操作しても問題は解決しない!

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日銀の金融政策の変更・・
 金利を操作しても問題は解決しない!

日本経済に大きな影響を及ぼすFRBと日銀の金融政策決定会合の結果は、FRBについては予想通り「利上げの先送り」でしたが、日銀の「総括的な検証」は期待外れの内容でした。

金利を下げても借り手がいない日本経済

リフレ派である日銀の総括的検証は、次の通りです。

このように物価目標を実現できない理由を原油価格の下落など外部要因に求めていますが、個別物価の下落は物価水準に影響しないというリフレ派の理論と矛盾するうえ、消費税率の引上げを主張していた黒田総裁の発言とは整合性がありません。
本来ならば、物価目標が達成できない理由として、金利をいくら引下げてもマネーの借り手が増加しない国内事情を挙げるべきであったと思います。この点、今春の中央総研セミナーで「預金が急増しているにも拘わらず借り手が不足しているので、日本経済は再びデフレになる可能性がある。そのため、政府が借り手にならざるを得ない」という指摘をしましたが、安倍政権は次の通り公共投資を増やし景気の底抜けを防いでおり、政府債務は拡大するものの妥当な政策であると思います。

というのは、大手百貨店の地方店舗の閉店・撤退や総合スーパーの赤字転落のニュースが相次いでいますが、その要因は「円安株高が円高株安に」潮目が変わった2016年から、円高と海外の減速を起因とする輸出の減少によって時間外労働時間が減り、残業代の減少と株安による富裕層の買い控えが消費の低迷をもたらしているからです。

緩和継続表明は出口問題を封印する・・

このように為替の動向は、国内経済に大きな影響を及ぼすなかで、日銀の新政策は、操作目標を「量」から「長短金利」へと変更しました。もともと金利を引下げても資金需要がない日本経済において金利を操作したところで、問題は解決しないと思われますが、米国は金利を正常化(引上げ)せざるを得ないので、徐々に円安に向かうと思います。
しかも、今回の検証で緩和を継続することを明確にしたことにより黒田総裁の退任時期とからむ出口問題を封印したことは評価
できると思います。

代表社員会長 小島興一

税金ミニ情報

夫婦控除創設?
~迷走する配偶者控除~

1.配偶者控除の適用推移と税効果

1961年に創設された配偶者控除は夫が働き妻が専業主婦という役割分担をしてきました。妻がパート従業員で働いても給与収入が年間103万円以下であれば夫の所得から38万円控除の適用があるため妻は労働時間の調整を行う事もあり、財務省発表によると2015年度の適用者数は約1,500万人で年間6000億円の税収減につながっております。創設当時は専業主婦世帯が多かったものの、現在は専業主婦世帯が687万世帯に対して共働き世帯が1,114万世帯と大きく上回っています。

2.夫婦控除の導入

そこで103万円の壁をなくすと同時に女性の社会進出の促進と働く女性の不公平感をなくすため配偶者控除を廃止し、夫婦のうち所得の多い方の収入から一定額を差し引いて税負担を軽減する「夫婦控除」を導入する方向で議論を進めてきました。仮に夫婦控除が導入されれば配偶者控除の103万円の壁が取り払われ、夫の扶養範囲で働いていたパート主婦の方は扶養範囲で調整する必要がなく働き方の選択肢が増え、専業主婦世帯やパート主婦世帯は増税となり、共働き世帯には今までなかった税額控除の恩恵を受ける事によって、両者の税負担の不公平感は解消されます。
しかし、高所得の専業主婦世帯では実質増税になる世帯も出るため、囁かれている来年1月の総選挙を控え与党から慎重論が高まり2018年1月よりの導入予定が先送りされる方向で議論が進んでおります。

3.これからの課題

その代替案として政府内では103万円以下である配偶者控除の要件を150万円前後に引き上げようとする意見があります。しかしながら今度は150万円を超えないように労働時間を抑える可能性があり150万円の壁が出来かねません。そもそも配偶者控除の廃止・見直しの議論は毎年のように上がっては消えての繰り返しとなっております。これからは選挙を意識しない肝が据わった議論を期待したいものです。

コンサルティング部課長 西村俊樹

経営ミニ情報

パート労働者への社会保険
~適用拡大で思わぬ恩恵?~

1.社会保険の適用拡大(平成28年10月1日より)

2016年10月1日時点で被保険者数(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の合計が、1年間のうち6カ月以上、500人を超えることが見込まれる事業所(特定適用事業所といいます)において、次の①~④のすべての要件を満たした場合には、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3未満の短時間労働者であっても、新たに厚生年金保険等の適用対象となりましたので、「資格取得届」の提出が必要です。
①週の所定労働時間が20時間以上あること
②雇用期間が1年以上見込まれること
③賃金の月額が8万8千円以上であること
学生でないこと

2.社会保険料の等級拡大

500人以下の事業所においては関係のなさそうな話ですが、適用拡大にあたり厚生年金保険料の等級がひとつ増えることになったため影響が出てきます。
以前の第1等級(標準報酬月額9万8千円)の下に新たに現在の第1等級(標準報酬月額8万8千円)が加わったからです。
この等級拡大措置は社会保険の適用拡大とは違い、事業所の規模は問われていません。
これまで9万3千円未満の報酬月額でも厚生年金保険料については9万8千円の等級の保険料を負担していました。等級拡大に伴って、以前の第1等級の被保険者については現在の第1等級に該当すれば、保険料の負担が減少することになります。
この下限該当者については、厚生労働大臣が職権で標準報酬月額の変更を行うため、各事業所での手続きは不要です。
しかしながら、各事業所の給与計算においては、厚生年金保険料の変更を行う必要があります。
10月の保険料の改定となりますので、給与からの控除は11月支給分からとなります。給与計算を行う担当者の皆さんは、ご注意下さい。

税務会計部第3課課長 丹羽裕正

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