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課税の不思議【277号】

各種税法には同じ課税物にもかかわらずその取扱いにより課税されないものがある。今回はその中で印紙税法による課税と地方税法による課税について取り上げます。
今般、世の中はアナログ社会からデジタル社会へ大きく変化し、また新型コロナウイルス感染症の流行により一段と進みました。税務申告の電子化(電子申告)、社会保険等の手続きの電子化など、電子による処理が増えております。
また、政府の書類の印鑑不要化への推進で申告書や契約書でも印鑑を押印しない場面が増えてきています。

電子契約等に対する印紙課税

印紙税法では次の条件のもと課税文書に対して課税をします。

  1. 「印紙税法別表第1(課税物件表)」に掲げられた20種類の文書ごとに定められた課税事項を記載した文書である
  2. 取引をする当事者の間で契約等を証明するために意図的に作成された文書である
  3. 印紙税法5条で定められた非課税文書でない

よって文書は、条件を満たさない場合は課税文書になりません
※課税文書該当の判断:文書の名称ではなく記載された内容

電子契約等は電子データによる取引であるため、「印紙税法基本通達第44条」に規定する紙(用紙等)に課税事項が記載されていないため、課税文書と定義されず印紙税が課税されないのです。プリントアウトした場合は課税の対象になります。
つまり、電子データで作成した契約書等は、その取り扱いにより税金の課税が変化します。
特に以下のような契約書を多く作成する業種では、電子契約書導入による恩恵があるのではないでしょうか。
※建設業・運送業 通信業 流通業 製造業 電気・ガス事業 不動産業

【印紙税法基本通達】

第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

固定資産税課税(償却資産税)

地方税法は第三百四十一条第四項にある資産を所有している者に、第三百八十三条により毎年一月一日現在における当該償却資産について課税します。
第三百四十一条
四 償却資産

  1. 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産
  2. その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもの
  3. 上記うちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの
  4. ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。

※その他政令で定めるもの

少額の減価償却資産の取得価額の損金算入

第百三十三条

  1. 取得価額十万円未満であるもの
  2. 第百三十三条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるもの
  3. 上記を損金の額に算入

一括償却資産の損金算入

第百三十三条の二
取得価額が二十万円未満であるものを一括償却資産の損金算入

以上より償却資産税対象資産のうち、少額の減価償却資産は会計上・税務上の取り扱いによって償却資産税の取扱いが変わってくる。

<申告の対象外であるもの>

  • 取得価格10万円未満の資産のうち一時に全額損金算入したもの
  • 取得価格20万円未満の資産のうち3年間で一括償却したもの

<申告の対象となるもの>

10万円以上30万円未満の備品消耗品を通常通り全額損金処理したもの
(※中小企業で中小企業の特例を適用して全額経費計上した場合は償却資産の申告の対象)

中小企業で少額の固定資産を取得したときには、ほとんどの場合中小企業の特例を適用させます。中小企業特例の適用を受けると、取得した固定資産の費用を早く損金算入することができるからです。しかし、償却資産税だけを見るとこの適用を受けない方がお得になる場合があります。取得価格10万円以上20万円以下の資産を取得した場合、いつも通りに中小企業の特例を利用すると、その資産は償却資産税の対象となります。
一方、上記の通り同じ取得価格が10万円以上20万円未満の資産でも、中小企業の特例を適用させず、3年間で一括償却をした場合は償却資産税の申告の対象外となります。つまり、償却資産で取得価格が10万円以上20万円未満の資産に限り「中小企業の特例を適用させない」経理処理を選択することで、税金の課税が変化します。

以上、同じ物でもその取扱い等により税金の課税が変化する不思議があります。

(大橋)

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