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相続時精算課税【296号】

令和5年度税制改正

資産課税では、相続時精算課税制度における基礎控除の創設や暦年課税における相続前贈与の加算期間の延長のほか教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の延長等が盛り込まれています。

相続時精算課税制度に基礎控除を創設

暦年課税と相続時精算課税の選択制は引き続き継続します。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から受けた贈与に係るその年分の贈与税については、現行の暦年課税の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除(年間110万円)を控除できることとなります。
また、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等される受贈財産の価額は、基礎控除後の金額となります。
これらの改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用です。

暦年贈与課税における相続前贈与の加算期間を3年から7年に延長

相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前に贈与を受けたことがある場合の相続税の課税価格への加算期間を、その相続の開始前7年以内(現行は3年以内)に延長となりました。延長する4年間に受けた贈与については、その贈与した財産の価額の合計額から100万円を控除した残額を相続税の課税価格に加算します。
これらの改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用です。

相続時精算課税制度を使うメリット

  1. 最大のメリットは、2,500万円という大型の控除
    例えば子供に2,500万円の贈与をする場合、相続時精算課税制度を選択した場合2,500万円まで贈与税がかかりません。暦年の贈与(一般的な贈与)を選択した場合は、暦年の贈与の控除は年間で110万円までとなっておりそれ以上は贈与税が課税されます。2,500万円を非課税内で贈与すると長期間(23年)が必要です。
    相続時精算課税制度を選択した場合一度で2,500万円を無税で贈与できます。一人の贈与者から、相続発生時までの間を通して2,500万円が限度です。そのため、ある年に1,000万円の贈与を行えば、翌年以後は残額の1,500万円の控除しか受けられません。
  2. 贈与額の合計が2,500万円を超過した分も一律20%しか課税されない
    相続時精算課税制度を適用した贈与財産が合計2,500万円を超えた場合、超過分の財産については贈与税の税率が一律で20%となります。 (令和6年以降は、基礎控除後の贈与財産が合計2,500万円を超えた場合となります。)通常、暦年課税にて一括で3,000万円を贈与する場合の税率は45%となっていますが、相続時精算課税制度の場合は、税率は20%となり、その結果、贈与税額は985万円の違いが出ます。
  3. 早期に多額の贈与ができる
    相続時精算課税制度が設立された理由には、祖父母、両親の財産を早期に子供や孫に移させて消費を拡大させる(経済の活性化)目的があります。相続時精算課税制度を選択した場合に、相続発生時に遺産として受け取るべき財産を、子供や孫が早期に財産を取得して必要な時期で有効に活用できるようになっています。
  4. 収益物件(賃貸マンション他)を贈与した場合、相続税対策になる可能性
    この理由は、相続時精算課税制度を選択して収益物件を贈与した場合、その後の賃貸収入は受贈者(子や孫)の収入となるため、その後の収益による貯蓄も課税対象にならないためです。
    両親や祖父母が収益物件を所有したまま相続が発生した場合、家賃収入もまた両親や祖父母の財産となるため、相続発生時には「収益物件+家賃収入(貯蓄)」が相続財産として課税対象になります。
  5. 生前に多くの贈与ができるため相続時の争いが予防できる
    相続時精算課税制度を適用させて生前贈与をした場合に贈与者(両親や祖父母)の相続発生時における親族間での相続争いを防ぐことができます。 不動産などは遺産分割の際に分割が困難な場合も多く、相続人同士で何をどうやって分割するのかという問題が発生します。相続財産を事前に相続をさせたい人に生前贈与しておくことで、遺された相続人同士の相続争いを防ぐことができます。

相続時精算課税制度を使うデメリット

  1. 一度選択すると暦年贈与が使えなくなる
  2. 小規模宅地等の特例が使えない
  3. 登録免許税や不動産取得税の負担が増える
  4. 贈与で取得した場合、相続時に物納ができない

などのデメリットについては次回につづきます。

(新堀)

 

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