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【196号】相続分野の民法改正 その2

Ⅲ 被相続人の介護等で貢献した親族は金銭請求が可能となる

   現行法では、長男の嫁など法定相続人でない親族が被相続人の介護や看病をするケースがありますが、これまでその親族は遺

 言が無い限り、介護や看病に対してのなんらかの報酬を受けることは出来ませんでした。

  今回の制度改正で、相続人でない親族(*)に対して寄与分が認められます。相続人でないことには変わりがないので、遺産を

 相続ずることは出来ず、その代り資産を相続した人に対して寄与に応じた金額(特別寄与料)の支払を求める金銭請求権が認めら

 れるようになります。

  (*) 相続人への金銭請求権が認められる相続人以外の親族とは、次の範囲の人たちです。

  ・ 相続人の6親等内の血族

  ・相続人の3親等内の血族の配偶者など

   但し相続放棄した人、相続欠格や相続排除で相続権を失った相続人を除きます。

  特別寄与料は、被相続人に対する寄与の時期、方法、程度や遺産の額などの一切の事情を考慮して定めることとされていま

 す。請求金額は、遺産総額から遺言で行った贈与を差し引いた金額を超えることは出来ませんが、それ以外具体的な決まりは

 ないため、金銭請求権が認められたとしても特別寄与料がどの程度もらえるかは不透明で、相続に関する紛争が増えたり、よ

 り複雑化する可能性もあります。

  当事者同士で協議がまとまらなかった場合、相続人でない親族が被相続人の死亡を知ってから6ヶ月以内に申し立てて家庭裁

 判所で審判を受けることになります。被相続人の死亡を知らず1年を経過すると申立出来なくなります。

 

Ⅳ 自筆証書遺言制度を利用し易くする

 (1) 自筆証書遺言の方式緩和

   現行法では、自筆証書遺言書は記載事項をすべて「自署」しなくてはならないため、財産目録についても自署が必要で、遺言

  者にとって大きな負担でした。また、様式不備や特定出来ないための無効リスクも伴っていました。

   今回改正で、財産目録については別紙として添付する場合に限って自署を不要とし、パソコンで作成する方法や、登記事項

  証明書、預金通帳など、記載したい財産の情報が表示されている資料のコピーを添付する方法が認められます。但し、別紙の

  全ページに遺言者の署名・押印は必要とされます。

 (2) 保管制度の創設

   現行法では、自筆証書遺言は遺言者の家で保管されるのが一般的であり、公正証書遺言の様に公的機関に保管される制度は

  ありません。このことは、遺言書の存在隠しておくことが出来る反面、紛失や変造のおそれがあり、後日その存在や有効性を

  めぐって紛争が生じやすいと言うデメリットがありました。

   そこで改正制度では、公的機関である全国の法務局で保管できるようにして、相続人が遺言の有無を調べられる制度を創設

  しました。保管の申し出にあたっては、例外なく本人が法務局へ出向く必要があります。遺言者は閲覧請求・原本の返還請求が

  出来、書き直しももちろん可能です。

 (3) 検認制度の不要

   自筆証書遺言を法務局に預けた場合は、家裁での検認手続きが不要になります。今までは検認手続きに1~2ヶ月を要してい

  ましたが、この制度の実現で速やかな相続手続きが期待出来ます。

次月に続く

(蒔田)

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