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貸倒損失【346号】

法人が事業を行う上で避けて通ることのできないリスクの一つに貸倒損失があります。貸倒損失が発生した場合は、なるべく早期に経費(損金)計上したいところですが、法人税法上、貸倒損失の計上には厳格な規定がありいつでも計上できるものではありません。

貸倒損失を計上するには、要件を満たす必要があり、計上する時期(タイミング)も定められています。タイミングを逃すと貸倒損失が認められない場合もありますので、規定に則って正確に計上することが必要となります。

貸倒損失の要件(法人税)

金銭債権が切り捨てられた場合(法律上の貸倒れ)

※法人税基本通達9-6-1

次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。

  1. 更生計画認可決定又は再生計画認可決定による切捨て
  2. 特別清算に係る協定の認可決定による切捨て
  3. 関係者の協議決定による切捨て
    ・債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めたもの
    ・行政機関、金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で合理的な基準によるもの
  4. 債務者に対し書面による債務免除(債務超過の状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済が不可能と認められる場合)

ポイント

法人税基本通達9-6-1(金銭債権が切り捨てられた場合(法律上の貸倒れ))では、書面による債務免除額が寄附金に該当しないか留意する必要があります。

金銭債権の全額が回収不能となった場合(事実上の貸倒れ)

※法人税基本通達9-6-2

事実上、金銭債権を回収することができない場合において、次の要件を満たすときは、その事業年度において損金の額に算入されます。

  1. 金銭債権の全額が回収不能であること
  2. 債務者の資産状況、支払能力等からみて回収できないことが明らかになった事業年度において貸倒損失として損金経理したこと
  3. 金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後であること
  4. その金銭債権が保証債務である場合は、現実にこれを履行した後であること

ポイント

法人税基本通達9-6-2(金銭債権の全額が回収不能となった場合(事実上の貸倒れ))では、全額回収不能を判断する場合において、過去の判例等を参考に検討する必要があります。

一定期間取引停止後弁済がない場合等(形式上の貸倒れ)

※法人税基本通達9-6-3

次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金等は含まない)について、その日以後の事業年度において、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒損失として損金経理することができます。

  1. 一定期間取引停止後弁済がない場合等
    継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき
    但し、不動産取引のように、たまたま取引を行った債務者に対する売掛債権については、この取扱いの適用はありません。
  2. 取立費用に満たない少額滞留売掛債権
    同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を催促しても弁済がない場合
    ここでいう同一地域とは、その法人における営業単位、回収業務を行う単位としての同一地域をいいます。

ポイント

法人税基本通達9-6-3(一定期間取引停止後弁済がない場合等(形式上の貸倒れ))では、一定の売掛債権のみが対象となり、取引停止期間や取立費用の範囲等に留意する必要があります。

最後に

貸倒損失の損金算入には、

  1. どの債権に対して
  2. どのような事由が生じたときに貸倒れがあったと認められるか
  3. どのように会計・税務処理を行えば法人税法上損金として認められるか

ということが重要となります。

(礒部)

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