第67号 2008.07.25
サブプライムによる米欧金融機関を中心とする金融危機によって、世界のマネーは株式や不動産の暴落リスクを回避するために原油・金・穀物などの実物資産に流入しています。そのため、1バーレル140ドル台まで高騰した原油をはじめ資源の急騰によるインフレが進行しつつあります。
このように物価インフレが進行するとリスクヘッジのために、不動産や株式の価格上昇による資産インフレとなるのが通常のパターンです。
ところが、今回のサブプライム問題は、欧米の金融機関に大きなダメージを与えたことにより、日本の不動産の最大の買い手である外資系ファンドは貸し剥がしに直面し、撤退せざるを得ない状況に追い込まれています。しかも、オフィスビルやマンションの供給過剰が、新築物件の空室率の急上昇をもたらし、今年に入って地価上昇の潮目は変り、東京や名古屋など一等地の地価は調整局面に入っています。
このような環境下で、国税庁が発表した相続税や贈与税の算定基準となる2008年分路線価が、次のとおり全国平均で前年比10.0%アップ(前年は8.6%アップ)と3年連続の上昇となりました。
| 年 | 東京圏 | 大阪圏 | 名古屋圏 | 地方圏 | 全国平均 |
| 1991年 | 950 | 949 | 301 | 120 | 396 |
| 2007年 | 306 | 163 | 110 | 52 | 130 |
| 2008年 | 351 | 175 | 122 | 52 | 143 |
| 前年比 | 14.7% | 7.4% | 10.9% | 0.0% | 10.0% |
| ピーク比 | 36.9% | 18.4% | 40.5% | 43.3% | 36.1% |
しかし、この地価は2007年の調査結果であり、現状とは異なっていることに注意を要します。
地域別にみると三大都市圏は3年連続で上昇し、東京都17.4%、宮城県12.5%、愛知県10.8%、大阪府8.6%、福岡県8.6%、神奈川県7.8%など14都道府県で上昇しました。
一方、香川県▼5.9%、秋田県▼5.7%、徳島県▼4.8%、福井県▼4.7%、岩手県▼4.7%など28県で地価下落が続き、このうち11県では下落幅が拡大しており、地価の二極化が鮮明となっています。
地価上昇の上位都道府県は、いずれもファンドが不動産の稼ぎ出す収益に着目して集中投資が行われた東京・仙台・名古屋・大阪・福岡・横浜などの大都市を抱える地域です。しかし、結果としてオフィスビルなどの過剰供給をもたらし、自ら首を絞める状況になりつつあり、来年発表の路線価は下落する可能性もあります。
特に、都道府県庁所在地の最高路線価の上昇率は、バブル期並みですから、サブプライムを契機にバブル崩壊もあり得る状況にあります。
| 順位 | 都市名 | 所在地 | 路価 | 前年比(昨年%) |
| 1 | 東京 | 銀座5中央通り | 31,840 | 27.6% (33.3%) |
| 2 | 大阪 | 角田町御堂筋 | 9,600 | 37.9% (40.3%) |
| 3 | 名古屋 | 名駅1駅前通り | 7,600 | 23.4% (33.9%) |
| 4 | 横浜 | 横浜駅西口 | 7,280 | 38.4% (35.9%) |
| 5 | 福岡 | 天神2渡辺通り | 6,290 | 22.9% (29.3%) |
このようにサブプライム問題は、インフレとともに株価や地価の下落をもたらしており、先月の紙面で指摘したように過去の石油危機とは異なる不況に突入する可能性があります。
名古屋国税局の前事務年度(平成18年7月~平成19年6月)の報告によりますと、名古屋国税局管内の法人数321,913件のうち、同事務年度中に実地調査が行なわれた件数は18,318件(5.7%)、その内、所得金額を過少として修正申告した法人数は13,590件に上っています。
調査対象となる法人の多くは黒字法人(全体の33.3%)で調査対象期間がおおむね3年であることから黒字法人のほぼ半数強が3年に一度の調査を受け、その内の約4分の3に当たる法人が修正申告をしている計算です。
修正申告書を提出すると、以下の税金が追徴されます。
県民税、市民税については本税以外に、延滞金が付加されますが、法人税と同様に除算期間が設けられています。また、法人税の加算税にあたる罰則金(地方税では加算金という)の取扱はありません。
事業税には、本税、延滞金のほか、加算金が付加されます。ただし、重加算金対象でない本税の修正部分については、法人税の修正申告書を提出してから1ヶ月以内に修正申告書を提出した場合に限り、過少申告加算金は免除されます。
(注) 利子税、延滞税、延滞金の年利率は次の計算期間に応じて次の割合が定められています。
| 期間 | 割合 |
| 平成20.1.1~平成20.12.31 | 4.7% |
| 平成19.1.1~平成19.12.31 | 4.4% |
| 平成18.1.1~平成18.12.31 | 4.1% |
先日、労働者派遣制度見直しの基本方針が与党内でまとめられ、今秋の臨時国会に改正案を提出する方針が発表されました。これまで、派遣可能業種の拡大や紹介予定派遣の解禁など、段階的に規制緩和を行ったことで拡大してきた派遣業界に対し、初めて規制強化の方針が出されたことになります。
今回の見直し案のポイントは、
の5つです。
日雇い派遣については、派遣大手のグッドウィルによる違法な派遣が表面化したことに伴い、特に問題視され、与党の基本方針では原則禁止とされています。
しかし、今まで引越し業や小売業などの繁閑の差が大きい業界において多いに利用されてきたシステムなだけに、人材の採用に係る手間や人件費などの経費の増大など、経営に少なからず影響を与えそうです。
特に人材の確保が難しい中小企業においては、かなりの打撃となる恐れもあります。
また、実際に日雇い派遣で生計を維持してきた労働者にとっても負担が大きいため、救済策として日雇い職業紹介事業への切り替えも検討されています。
ポイントの1つである「専ら派遣」とは、企業が人材派遣会社(100%子会社など)を設立し、親会社などの特定会社にのみ労働者を派遣することです。
この場合、人件費の抑制を目的に行われることがあるため、ワーキングプアを生む温床にもなっていると考えられています。
「専ら派遣」は、現行法でも禁止されているのですが、特定会社に何割派遣していたら違法になるなどの基準が無いために、強く取り締まれないという実情がありました。
今回の改正案では、違法となる数値基準を設けることで、規制の強化を行う予定です。
また、偽装請負などの違法派遣に対する罰則が強化される、受け入れ企業に対し、派遣労働者の直接雇用を勧告する制度も盛り込まれています。
その上、派遣会社のマージン率の公表を義務化することで、労働者が自分に有利な登録先を選択できるようになると、派遣業界の淘汰がますます進んでいくものと思われます。