第66号 2008.06.25
低所得者への住宅融資が不良債権化したことによって生じたサブプライム問題は、(1)景気の減速、(2)株価や地価の下落、(3)機軸通貨ドルの下落、(4)石油や穀物等の高騰をもたらしています。

とくに、証券投資リスクやドルの購買力低下などによる「質への逃避」により、原油・金・穀物などの実物資産の高騰により、途上国のみならず先進国もインフレが進行しつつあります。
| 先進国 | 前年比 % | 途上国 | 前年比 % |
| 米国 | 3.9 | ロシア | 12.7 |
| ユーロ | 3.6 | 中国 | 8.5 |
| 英国 | 3.0 | インド | 7.8 |
| 日本 | 0.8 | ブラジル | 5.0 |
問題は、このような原油価格の高騰によるコストアップを消費者物価に価格転嫁できるかどうかです。先人の言葉に「苦しいときには、歴史に学べ」といわれていますが、私たちは、既に過去2回原油価格の大幅引き上げを経験しています。
そこで、過去2回の石油危機のときは、どのように乗り越えてきたか確認するために、今回の原油高騰と過去2回のケースを比較すると、下表のとおり過去2回の石油危機は中東戦争やイラン革命によって原油の供給が減少した結果、第1次石油危機時には1バーレル3ドルが12ドルに、第2次には19ドルが34ドルに高騰しました。
| 石油危機 | 第1次 | 第2次 | 第3次? |
| 発生年度 | 1974~ | 1980~ | 2007~ |
| 石油価格(1バーレル) | 12ドル | 34ドル | 130ドル |
| 危機発生の原因 | 中東戦争 | イラン革命 | 投資資金 |
| 石油輸入額/GDP | 3.8% | 7.3% | 6.0% |
| 企業物価指数(前年比) | +18.9% | +9.4% | +3.7% |
| 消費者物価指数( 〃) | +17.8% | +5.7% | +0.8% |
(注)1次2次の企業物価・消費者物価指数は3年間平均値
上表のように、コストプッシュにより企業物価指数は上昇したが、次の事情により価格転嫁によって消費者物価は上昇し、インフレになりました。
ということは、現在の日本のように給与所得者の給与総額も平均給与も年々低下している環境では、コストプッシュを消費者物価に転嫁すると、消費量が減少し、企業の売上高は減少する可能性があります。
しかも、規制緩和と少子化・高齢化などによって供給過剰の状況が続いています。まさに、過当競争のなかでコストプッシュをできるだけ人件費の圧縮で凌ぐという厳しい経営をせざるを得ないと予想されます。
もちろん、給与が上がらない環境下でインフレになれば、景気は低迷し、日本国民にとってかなり厳しい経済環境になり、スタッグ・フレーションもあり得ますので、今まで以上に新商品開発、新販路開拓が重用になっています。
不動産ファンドは、投資家から集めた資金を不動産で運用しますが、証券投資信託が株や債券で運用する違いを除いてその原理は同じです。
収益には、不動産ファンドが取得した物件から得られる賃貸収入を投資家に分配する「インカムゲイン」と不動産ファンドがその不動産の売却によって得た資金を出資金の払戻金として分配する「キャピタルゲイン」があります。
不動産ファンドが投資家から全額出資を受けるのではなく、銀行からの融資で一部を賄った場合には投資家の利回りにレバレッジ効果(小さな力で大きな効果を生むテコの効果)が生まれます。
たとえば、不動産ファンドの利回りが5%とすると、投資家が全額出資すれば投資家の利回りは単純に5%となりますが、資金の7割を銀行から金利3%で調達した場合の投資家の利回りは、次のように9.6%に上昇します。
![]()
*1 不動産利回り5%
*2 銀行利息比率
*3 投資家出資割合
不動産ファンドもいずれは不動産の売却によって終焉を迎えます。
私募型の不動産ファンドの場合は、長期的な運用を予定しておらず、長くて3年で公募型のJ‐REIT等への売却によって、「出口」が確保されていると考えられます。
しかし、J‐REITにしか投資機会がない一般投資家にとって、これからも高いインカムゲインが得られたとしても、不動産価額が急落している場面では、出口戦略(売り抜けのタイミング)が重要となります。
不動産には株や債券のような取引所があるわけではなく、予定価額で売却することは簡単ではありません。
バブル崩壊で不動産会社や銀行が味わった苦い経験を、今度は個人投資家が味わう危険性をはらんでいるといえそうです。
諸外国の青壮年労働者を日本に受け入れ、1年以内の期間に、我が国の産業・職業上の技術・技能・知識の修得を支援する外国人研修制度があります。
1981年に国際協力と国際貢献を目的に「研修」という在留資格が創設されました。その後、1993年にはその研修終了後に在留資格の変更等をし「実習生」として研修(実習)先企業と雇用契約を結び2年間の技能実習を積むことがきる制度が導入されました。
この制度ですが、もともとは諸外国の技能向上、知識習得のための制度ですが、最近は低賃金の労働力確保のために、本制度を利用するケースが増加しており、不適正な事例が数多く報告されています。
| H15年 | H16年 | H17年 | H18年 | |
| 認定件数 | 92 | 210 | 180 | 229 |
最近では、研修生・実習生の失踪事件の多発化を受けて、JITCO(財団法人 国際研修協力機構)は「失踪防止対策について」を発表しました。失踪のほか、禁止されている強制貯金、パスポートの預かり等、違反事例が多く報告されています。また米国務省の人身売買に関する2007年版報告書では、この制度をとり上げ、非人権的な状況に置かれている研修生の状況把握や問題解決などを指摘し、日本側に制度の廃止を提案しています。
高まる批判を背景に、厚生労働省の研究会は6月13日最終報告書をまとめ、実習生の受け入れ団体に許可制を導入することを打ち出しました。他の関係省庁とも内容を調整し、改正案を提出する見通しとなっています。今後の動向について注目が必要です。