サブプライム問題を契機に世界経済の均衡が崩壊し、米国発の世界経済の後退が鮮明となり、日本の『実感のない景気拡大』は終焉しつつあります。
しかし、このような厳しい経済環境のなかにあっても昇給が話題となる季節が到来しました。そのため、先月号の中央総研ニュースで『賃上げなくして景気回復なし』という意見を掲載しました。
その理由は、93年に1人当たりの国民所得が世界第2位であった日本は、06年には第18位に転落しているからです。問題は諸外国の1人当たりの国民所得は増加しているにも拘らず、日本は13年前よりも減っているという事実です。
| 1993年 | 2006年 | 所得増加率 | |||
| 1 | ルクセンブルグ | 436万円 | 1 | 988万円 | 2.27倍 |
| 2 | 日本 | 385 | 18 | 377 | 0.98 |
| 3 | スイス | 384 | 5 | 564 | 1.47 |
| 4 | ノルウェー | 301 | 2 | 790 | 2.62 |
| 5 | デンマーク | 298 | 6 | 559 | 1.88 |
このように国民所得が減っているのは、国際競争力を強化するために人件費の抑制が続いているからです。このことが結果として、国内市場の消費の低迷をもたらしています。福田首相が経団連に賃上げを要請したのもそのためです。
もちろん、厳しい中小企業の台所を考えると、賃上げの余地はないと思います。しかし、次の算式のように労働生産性をアップして、その範囲内で賃上げを行うことが日本再生のためにも必要です。
人件費アップ=労働生産性アップ×労働分配率
ところが、日本の中小企業は、原料アップを価格転嫁できないために、人件費を抑制しているのが実態です。企業が生き残るためには、このように賃金を抑制することは、経営者にとって正しい判断です。
しかし、雇用環境が激変しています。求人倍率は2倍を超えるなど人手不足が顕著となり、人手確保のために昇給せざるを得ない環境になっています。
最近の昇給率や昇給額は次のとおりですが、円高により景気の悪化が進行していますので、今春の中小企業の昇給率は1%程度に低下しそうです。
| 大企業昇給率(金額) | 中小企業昇給率(金額) | |
| 2006年 | 1.79%(5,661円) | 1.47%(3,587円) |
| 2007年 | 1.87%(5,890円) | 1.55%(3,807円) |
ということは、中小企業が1%の昇給を行うためには、労働分配率を現状維持しつつ労働生産性を2%程度アップすることが必要となります。
昇給率1.0%÷労働分配率53.3%=約2%
現状の人員と労働分配率を前提に、限界利益を約2%アップすれば、1%の昇給が可能です。
もちろん、生産性のアップは簡単ではありませんが、
1. 仕事の一部を外注化できないか、
2. 現在の商品を他の販路で売れないか、
3. 現在の顧客に他の商品を買ってもらえないか
など生産性の観点から自社全体の仕組みの見直しを行い、仕事の効率化に取組んでいただきたいと思います。
(小島理事長)
「リース取引に関する会計基準」の改正に併せて、リース取引に関する法人税法上の取扱いも改正され、平成20年4月1日以後に締結されるリース契約から、ファイナンス・リース取引(中途解約禁止で、リース資産のコスト全てを借手が負担するリース)すべてを、『賃貸借』ではなく、『売買』として取扱うと改正されました。
改正により、リース資産に対する税額控除は、リース料総額の60%についてしか税額控除が認められていなかったものが、通常の売買取引と同様に、100%の税額控除が認められることになります。
さらに、法人税法では、支払リース料を費用処理する賃貸借処理をした場合にも、税務上の問題が生じないよう配慮されていますが、あえて売買処理を行い、資産計上すれば(別表16(4)の記載必要)、通常の売買取引と同様に、償却額を償却限度額より少なくする利益の調整も可能になります。
消費税についても、売買に準じた処理になるため、リース料総額が課税仕入れとして認められ、リース取引開始時に一括して仕入控除を行うことになるので、リース期間を通じて仕入控除していた従来に比べて、早期に仕入控除が可能であり、かなり有利になります。
リースの利用は、企業の資金調達を補うメリットがあるうえ、税制改正により(資産購入に比べた)デメリットは減少したため、資金力の乏しい企業にとって、リースの魅力は大きくなったと言えます。
また、購入資産(又は所有権移転ファイナンス・リース)に適用される定率法は、昨年の改正により、早期償却のメリットが増したため、収益力の高い企業にとっては、定率法も魅力的になっていると言えます。
そのほか、オペレーティング・リース(中途解約可能で、リース資産に係るコストを貸手が負担するもの)は、単なる賃貸借として扱うので、会計監査を受ける企業にとっては、経理処理の負担が少なくなります。
今後、設備投資の際は、取得か?リースか?リース契約の区分をどうするのか?を自社の状況に応じて判断する必要があると思われます。
(小島淳)
今月に入り原油は1バレル・110ドルを超える史上最高値を更新するなど高騰が続き、金などレアメタルといわれる希少金属の価格だけでなく大豆やとうもろこしなどの商品相場も高騰しています。原因は世界の金余り、過剰流動性にあると言われています。株式や債券などの市場にあった資金が、サブプライム問題による金融不安を発端に、資源相場に資金の矛先を向け相場を押し上げています。その結果、企業物価指数は上昇し、消費者物価指数も上昇の兆しとなり、インフレーション(=インフレ)傾向にあるといえます。
一方、都市部における地価高騰の勢いも衰えを見せ、地方における収益力のない地価はまだまだ下落しています。また、企業倒産数は増加傾向(H20.2月倒産件数1,194件負債額10億円以上;前月比+1.7%,全年同月比+8.3%;東京商工リサーチ)にあり、平均給与所得は減少傾向、消費支出は伸びていない状態です。
インフレになれば、本来、物価上昇にあわせるように給与水準も上がり、消費が伸び、雇用が増加するという状況になるはずです。しかし、物価上昇だけが進み、景気は停滞あるいは悪化した状態となっています。このような状態をスタグフレーションと言います。スタグフレーションになれば、賃金が上がらず消費物価は上昇していますので、貯蓄率は下降し、苦しい生活を強いられることになります。
過去にスタグフレーションとなったのは、いわゆる「石油ショック」、昭和47年頃の話があります。
また、サブプライム問題によるアメリカの景気後退懸念からドルが売られ、12年振りに100円/us$を割り一時95円台にまでなりました。このような円高が続けば、日本の景気を下支えしてきた輸出産業の業績悪化につながり、日本の景気後退懸念も考えられます。日本市場は世界における経済連鎖による影響を大きく受けるようになっています。
今後、さらなる厳しい経済環境が予想されるなか、中小企業が生き残るには、付加価値の高い、独自性を持った、市場における存在価値のある製品づくり・会社づくりが求められています。
(桑原)


